遺伝カウンセリングとは|相談できる内容・出生前検査との関係

遺伝カウンセリングとは、遺伝や染色体が影響する病気・体質について、医学的に正確な情報を整理しながら、ご本人やご家族のご相談をお受けする場です。
「カウンセリング」と聞くと、感情的な悩みを聞く場を想像する方もいるかもしれません。もちろん、ご本人やご家族の不安・悩みをご相談いただくことも、遺伝カウンセリングでは大切なことです。
しかし遺伝カウンセリングでは、遺伝性の病気や体質を持つ可能性、今後の検査、検査でわかること・わからないことなども併せて、医療の専門的な視点から一緒に整理していきます。
また、遺伝カウンセリングは「さらに詳しい検査を受けるようにすすめる場」ではありません。
検査を受ける選択も、受けない選択も、どちらも大切にしながら、ご本人が自分の価値観に合った判断をできるよう支える場です。
この記事では、遺伝カウンセリングの概要、相談できる内容、実際の流れ、出生前検査やNIPTとの関係について、丸の内の森レディースクリニックがわかりやすく解説します。
遺伝カウンセリングとは

遺伝カウンセリングは、遺伝に関わる悩みや疑問に対して、医学的根拠に基づく情報提供と心理社会的な支援を行う医療の一部です。
大きく分けて、次の3つの役割があります。
- 情報提供:検査でわかること・わからないこと、検査の限界・リスクなどを正しく伝える
- 心理的サポート:心理的な不安や迷いに寄り添う
- 意思決定の支援:ご本人やご家族が納得した選択を行えるようにサポートをする
また日本医学会の「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」では、遺伝学的検査はご本人だけではなく血縁者にも関係しうる情報を扱うものとして、十分な説明と理解、必要に応じた遺伝カウンセリングの重要性が示されています。
例えば、ある遺伝学的検査で遺伝的な病気の傾向が見つかった場合、その情報はご本人の診断や治療だけではなく、親、きょうだい、お子さんなど血縁者の健康管理にも関係します。
一方で「今後詳しい検査を受けるかどうか」「今後の生活をどう送っていくか」「家族にどこまで伝えるのか」といった問いには、医学的な知識だけではなく、ご本人の気持ちや生活背景をふまえた整理が必要です。
遺伝カウンセリングでは、こうした複雑な情報を一方的に説明するのではなく、相談者の理解度や不安に合わせて、段階的に整理・確認していきます。
遺伝カウンセリングで相談できること

遺伝カウンセリングは、がん、妊娠・出産、神経疾患、循環器疾患、先天性疾患、染色体疾患、代謝疾患など、遺伝が影響するさまざまな領域で行われています。
具体的には、次のような相談ができます。
- 家族や親族に遺伝性疾患の方がいるので、自分に遺伝しないか確認したい
- 自分の病気が子どもに遺伝するのか知りたい
- 妊娠前に遺伝的なリスクを相談したい
- 遺伝学的検査を受けるか迷っているので相談したい
- 赤ちゃんの染色体疾患や出生前検査について相談したい
「念のために遺伝性の病気がないか確認しておきたい」「検査を受けるべきかどうかもわからない」という段階でも相談できます。
遺伝カウンセリングの流れ

遺伝カウンセリングでは、最初に相談の目的を確認します。
医師からすすめられて来たのか、病気や体質の遺伝が気になっているのか、妊娠や出産に関する相談かどうかなど、相談の目的によって、必要な情報や配慮すべき点は変わります。
次に、現在の健康状態、これまでの病歴、妊娠・出産歴、ご家族の病気、過去の検査結果などを確認します。
また、必要に応じて家系図を作成することもあります。
家系図といっても、すべてを完璧に調べる必要はありません。
わかる範囲で(可能であれば3世代以上で)、どなたが、何歳ごろに、どのような病気を指摘されたかを整理していきます。
その上で、医学的な情報について説明します。
例えば、染色体とは何か、遺伝子とは何か、顕性遺伝(優性遺伝)・潜性遺伝(劣性遺伝)とはどういう意味か、検査で何がわかるのか、検査結果が陰性でもどのようなリスクや可能性が残るのか、といった内容です。
ここで大切なのは、検査のメリットだけではなく、限界も確認することです。
遺伝学的検査には、診断や治療に役立つ情報が得られる場合がある一方で、検査結果の解釈が難しい場合や、将来の発症リスクを完全には予測できない場合もあります。
遺伝カウンセリングでは、そうした点も含めて、今後詳しい検査を受けるかどうかを一緒に検討していきます。
検査結果が出た後には、その結果が何を意味するのか、今後どの診療科や専門機関と連携するのか、家族や血縁者にどう伝えるのか、追加検査が必要かどうかなどを整理します。
結果を聞いてすぐに結論を出す必要はありません。「考える時間」をとることも、遺伝カウンセリングでは大切なことです。
遺伝カウンセリングは誰が担当するのか

遺伝カウンセリングは、さまざまな診療科で行われています。
遺伝カウンセリングを専門とするのは、以下の2つです。
- 認定遺伝カウンセラー:遺伝医学、心理、倫理、社会的支援などを専門的に学び、遺伝に関する相談を支援する専門職。
- 臨床遺伝専門医:日本遺伝カウンセリング学会と日本人類遺伝学会が共同で認定した専門医。出生前診断・発症前診断・保因者診断など、高度な遺伝カウンセリングにも対応できる。
相談内容によっては、産婦人科、小児科、内科、腫瘍内科、乳腺外科、神経内科、循環器内科など、複数の診療科が関わることもあります。
遺伝カウンセリングは、1人の専門家がすべてを診断する場ではなく、必要な医療や支援につなぐ入口でもあります。
遺伝カウンセリングを受けるタイミング

遺伝カウンセリングは、検査の直前だけではなく、さまざまなタイミングで受けられます。
検査前であれば、「そもそも検査を受ける必要があるのか」「どの検査を選べばよいのか」「検査結果を知ることで何が変わるのか」を整理できます。
検査後であれば、「結果をどう理解すればよいのか」「追加検査は必要か」「家族に伝えるべきか」「次の妊娠や健康管理にどう関係するか」を相談できます。
また遺伝カウンセリングは、妊娠前や妊娠中に受けることもできます。
例えば、家族や血縁者に遺伝性疾患の既往歴がある方、過去の妊娠で赤ちゃんの病気を指摘された方、出生前検査を検討している方は、遺伝カウンセリングも一つの選択肢になります。
遺伝カウンセリングは「まだ検査を受けるか決めていない」という段階でも相談できます。
むしろ、迷っている段階で相談し、情報を整理することが、ご本人やご家族にとって納得できる選択へとつながります。
遺伝カウンセリングと出生前検査の関係

出生前検査は、遺伝カウンセリングが特に重要になる場面の一つです。
出生前検査には、疾患の可能性を調べる「非確定的検査」と、診断を確定する「確定検査」があり、検査ごとに対象疾患・精度・結果の意味・リスクが異なります。
さらに、陽性・陰性・判定保留といった結果は、その後の確定検査の要否や妊娠中の管理、ご家族との意思決定にも関わるため、検査前から遺伝カウンセリングで医学的な限界と選択肢を整理しておくことが大切です。
NIPTで遺伝カウンセリングが重要な理由
出生前診断のなかでも、近年認知度を上げているのが「NIPT(新型出生前診断)」です。
NIPTは採血で行えるため、簡単な検査のように思えるかもしれません。
しかし、場合によってはNIPTと併せて遺伝カウンセリングが推奨されることもあります。
第一に、NIPTは陽性でも診断が確定しない「非確定的検査」です。
出生前検査認証制度等運営委員会が公開しているNIPTコンソーシアムの追跡調査では、NIPTで陽性となった人のうち、確定的検査で実際に対象疾患が確認された割合は、21トリソミーで97.3%、18トリソミーで88.0%、13トリソミーで54.3%と報告されています。
疾患によって陽性的中率は異なり、年齢や超音波所見などの背景によっても結果の受け止め方は変わります。
第二に、NIPTが陰性でも、すべての病気が否定されるわけではありません。
NIPTの対象は主に21・18・13トリソミーであり、心臓や脳、消化管、骨格などの形の異常、その他の染色体変化、単一遺伝子疾患の多くは対象外です。
第三に、判定保留という結果が出ることがあります。
これは、胎盤由来DNAの割合、妊娠週数、母体側の要因、双胎妊娠など、さまざまな理由で起こりえます。
判定保留は陰性と同義ではないため、再検査、超音波検査、確定的検査など、次の方針を個別に考える必要があります。
第四に、NIPTは「調べる項目が多ければ多いほどよい」とは限りません。
認証施設のNIPTでは、検査精度や医学的意義が十分に検証されている21・18・13トリソミーに対象を限定しています。
性染色体、微小欠失、全染色体検査なども検査する施設もありますが、検査結果をどの程度信頼できるのか、何を確認すべきなのかが難しくなることがあります。
つまりNIPTは、検査結果の判断が難しい検査の一つと言えます。
だからこそ、NIPTを受検する前に遺伝カウンセリングを行い、「陽性だったらどうするか」「検査によって何が分かり、何が分からないのか」「判定保留だったらどう考えるか」までを確認し、受検後には「追加の検査を行うかどうか」「どのような社会的支援を受けられるのか」などを理解することが大切になります。
出生前検査の前に遺伝カウンセリングで確認すること
出生前検査の前の遺伝カウンセリングでは、まず「何を知りたいのか」を整理します。
ご自身やご家族に遺伝性の病気や体質がないか確認したいのか、病気や体質が赤ちゃんに遺伝しないか確認したいのか、特定の染色体疾患が心配なのか、年齢によるリスクが気になるのか、超音波で指摘された所見について確認したいのかなど、目的によって、適した検査は変わります。
次に、以下のようなことを話し合います。
- その検査で何がわかり、何がわからないのか(検査結果が何を意味するのか)
- 検査の種類・リスク・受ける時期(妊娠週数)の違い
- その検査がご本人にとって本当に必要かどうか
- 結果が出た後の選択肢
- 検査結果がご家族や血縁者に与える影響
「自分たちの不安や期待は、検査でわかることなのか/検査で解決できることなのか」を整理するプロセスでもあります。
遺伝カウンセリングでは、出生前診断を「受けるべき」「受けないべき」と結論を急ぐのではなく、診断を受けることで得られる安心と、生じる不安の両方を整理します。
ご本人が大切にしていること、パートナーとの考え方、妊娠週数、医療的な状況をふまえて、その方に合う選択を一緒に考えます。
丸の内の森レディースクリニックのNIPTと遺伝カウンセリング

丸の内の森レディースクリニックは、日本医学会認定のNIPT認証施設です。
当院が大切にしているのは、NIPTを「採血だけの検査」として扱わないことです。
NIPTの前に超音波検査で赤ちゃんの状態を確認し、NIPTが本当にその方に適した検査なのか、初期精密超音波検査や確定的検査を優先した方がよい状況ではないかを考えます。
実際に当院では、検査前の超音波所見により、NIPT以外の選択肢がより適切と判断された方が5.9%いらっしゃいました。
NIPTは安価ではない検査だからこそ、採血前に赤ちゃんの状態とご本人の希望を確認し、その方にとって意味のある選択肢を選ぶことが重要だと考えています。
NIPT陽性時には、確定検査や連携医療機関へのご紹介も行います。
出生前検査を受けるか迷っている方、NIPTでわかること・わからないことを整理したい方、認証施設で相談したい方は、下記のページもご覧ください。
▷NIPT(新型出生前診断)
また遺伝カウンセリングでは、それぞれの検査について「受ける/受けない」の選択のサポートを行ったり、検査結果を受け止め、次の選択肢を整理したりさせていただきます。
当院では、まず「どの検査を受けるか」ではなく、「何を知りたいか」「何を心配しているのか」を伺うことを大切にしています。
遺伝カウンセリング時には、受ける/受けないも含めて、検査の種類と意味、分かること・分からないこと、結果が出た後のことまで丁寧にご説明します。
当院の遺伝カウンセリングの費用
遺伝カウンセリングの費用は医療機関によって異なります。
当院では、NIPTの料金に院長による遺伝カウンセリングが含まれており、追加費用はかかりません。
検査前から結果後まで責任をもってご対応します。
NIPT認証施設の特徴
NIPTを検討中の方は、NIPT認証施設でのご相談をおすすめします。
NIPT認証施設とは、出生前検査認証制度等運営委員会が、NIPTを実施する医療機関・検査分析機関として一定の基準を満たしていると認証した施設です。
認証施設では、特に以下の点に留意しています。
- 検査前に十分な説明と遺伝カウンセリングを行う
- 受ける・受けないのどちらにも誘導しない
- NIPTの対象疾患と限界を説明する
- 陽性的中率や偽陽性・偽陰性を説明する
- 陽性や判定保留の場合に確定的検査へつなげる
- 小児医療や福祉の情報にもつなげる
- 認証された検査分析機関に委託する
- 実施状況を年次報告として提出する
遺伝カウンセリングに関してよくある質問

東京・丸の内の遺伝カウンセリングは「丸の内の森レディースクリニック」へ

遺伝カウンセリングは、検査を受けるように誘導する場ではなく、受ける選択も受けない選択も尊重される場です。
「検査を受けた方がよいのか」「結果を知ることでかえって不安にならないか」「陽性だった場合にどう考えればよいのか」など、迷いや不安がある段階で相談していただけます。
丸の内の森レディースクリニックでは、NIPT認証施設として、院長による遺伝カウンセリングとプレエコーを行い、検査前から結果後まで一貫してサポートします。
採血を行う前に、NIPTでわかること・わからないこと、超音波検査で確認できること、結果が出た後の流れまで丁寧に整理します。
検査を受けるか迷っている段階でも、お気軽にご相談ください。
ご自身とご家族にとって納得できる選択ができるよう、医学的な情報とお気持ちの両方を大切にしながら一緒に考えていきます。
参考文献
- 丸の内の森レディースクリニック「出生前診断(NIPT・新型出生前診断)|東京・丸の内のNIPT認証施設」
- 日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」
- 日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン Q&A」
- 日本遺伝カウンセリング学会「遺伝カウンセリングQ&A」
- 日本認定遺伝カウンセラー協会「認定遺伝カウンセラーとは」
- 出生前検査認証制度等運営委員会「出生前検査認証制度等運営委員会設置の経緯について」
- 出生前検査認証制度等運営委員会「認証医療機関・認証検査分析機関一覧」
- 出生前検査認証制度等運営委員会「認証施設がNIPTで調べる病気を限定している理由」
- 出生前検査認証制度等運営委員会「NIPTを受けた10万人の妊婦さんの追跡調査」







