出生前診断とは?種類・費用・認証施設を詳しく解説

「出生前診断」と聞くと、「NIPT(新型出生前診断)」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、出生前診断はNIPTだけを指す言葉ではありません。おなかの赤ちゃんについて、生まれる前にわかる範囲の情報を調べる検査の総称であり、NIPT、胎児超音波検査、コンバインド検査、クアトロ検査、羊水検査、絨毛検査など、目的も精度も違う複数の検査が含まれます。
そして、出生前診断で最も大切なのは「どの検査が一番よいか」を単純に決めることではありません。
大切なのは、次の4つを理解したうえで選ぶことです。
- 何を知りたいのか
- その検査で何がわかり、何がわからないのか
- 結果が陽性・陰性・判定保留だった場合に何が起こるのか
- 結果を受け取ったあと、医療機関がどこまで支えてくれるのか
この記事では、出生前診断の基本から、検査の種類、費用、クリニックの選び方まで詳しく解説します。
出生前診断とは

出生前診断とは、妊娠中に、おなかの赤ちゃんが持つ可能性のある病気やからだの特徴、発育の状態などを調べる検査のことです。出生前検査と呼ばれることもあります。
こども家庭庁の「妊娠中の検査に関する情報サイト」では、出生前検査は、妊婦健診とは異なり、検査を希望する方が受ける検査として説明されています。妊婦健診では見つからない病気がわかることもありますが、すべての病気がわかるわけではありません。
そして出生前診断は、赤ちゃんの将来を決めつけるための検査ではありません。赤ちゃんの状態を知り、妊娠中の過ごし方、分娩施設の選び方、生まれたあとの医療や支援の準備を考えるための一つの検査であると言えます。
日本医学会の出生前検査認証制度等運営委員会の指針でも、出生前検査は、胎児の状況を正確に把握し、将来の予測を立て、妊婦さんとパートナーの意思決定を支援するものと位置づけられています。
出生前診断を受ける人はどのくらい?

日本では、出生前診断を受けた人の数をすべて正確に把握できる全国統計はありません。
ただし、出生前検査認証制度等運営委員会は、複数の調査から推計すると、NIPT・羊水検査・絨毛検査・母体血清マーカー検査・コンバインド検査の合計件数は、年間の出産件数のおよそ1割に相当すると説明しています。
また、国立成育医療研究センターなどの研究グループが2003〜2023年の国内データを解析した報告では、全妊婦における出生前遺伝学的検査全体の実施率は、2011年頃の約3%から、2023年には約11.5%へ増加したとされています。
つまり、出生前診断は「一部の人だけが受ける特別な検査」から、妊娠初期に選択肢として考える人が増えている検査へと変化してきています。
NIPTに限ってみると、出生前検査認証制度等運営委員会の2024年度実施状況報告では、認証施設でNIPTに関する遺伝カウンセリングを受けた妊婦さんは75,657人、その後NIPTを受けた妊婦さんは63,408人でした。
厚生労働省の人口動態統計による2024年の出生数は686,173人のため、単純に比較すると、認証施設でNIPTを受けた人数だけでも出生数の約9.2%に相当します。
ただし、この数字は「すべての妊婦さんのうち9.2%がNIPTを受けた」という厳密な受検率ではありません。年度と暦年の違いがあり、非認証施設でのNIPTや、NIPT以外の出生前検査は含まれないためです。
皆さんに知っていただきたいのは、出生前診断は「みんなが受けているから受ける」「少数派だから受けない」と決めるものではないということです。
出生前診断では「受ける・受けない」のどちらの選択も尊重されます。
だからこそ、検査を受ける前に、何を知りたいのか、結果をどう受け止めるのか、陽性だった場合にどのような支援を受けられるのかまで確認しておくことが大切です。
出生前診断は「受ける検査」ではなく「選ぶ検査」です
出生前診断で誤解されやすいのは、「妊娠したら受けるもの」「高齢妊娠なら当然受けるもの」と考えられてしまうことです。
しかし、出生前診断はマススクリーニングとして一律に行う検査ではありません。日本医学会の指針では、出生前検査を一律に実施したり推奨したりすることは否定されるべきで、十分な説明と遺伝カウンセリングのもとで、自律的な判断ができるよう支援することが重要とされています。
繰り返しになりますが、出生前診断では「受ける・受けない」のどちらの選択も尊重されます。
当院でも、検査を受けること自体をゴールにはしていません。NIPTを希望されて来院された場合でも、カウンセリングと超音波検査をふまえ、その方にとってNIPTが本当に適した検査かを確認したうえでご案内しています。
出生前診断でわかること

出生前診断でわかることは、大きく分けると次の2つです。
- 染色体の数や構造に関する病気の可能性(NIPT、コンバインド検査、クアトロ検査など)
- 赤ちゃんのからだの形や臓器の発育に関する情報(胎児超音波検査)
NIPT、コンバインド検査、クアトロ検査などは、主に染色体疾患の可能性を評価します。NIPTは、妊婦さんの血液中に含まれるcell-free DNA(cfDNA)を分析する検査です。妊婦さんの血液中のcfDNAの一部は胎盤に由来しており、胎盤は原則として赤ちゃんと同じ受精卵から発生するため、染色体疾患の可能性を推定できます。
▷詳しくはこちら「NIPTでわかる染色体疾患|ダウン症・18・13トリソミーとは」
一方、胎児超音波検査では、脳、心臓、顔面、手足、内臓、胎盤、羊水などを画像で観察します。NIPTではわからない形態的な異常が、超音波検査で見つかることもあります。こども家庭庁の情報サイトでも、胎児超音波検査は通常の妊婦健診より時間をかけて赤ちゃんを観察する検査として説明されています。
この2つは、どちらか一方が優れているというわけではなく、見ている情報が違います。
NIPTは、染色体疾患の可能性を見る検査です。
胎児超音波検査は、赤ちゃんの形や発育を画像で見る検査です。
そのため、NIPTだけで「赤ちゃんの異常がすべてわかる」というわけではありません。
出生前診断でわからないこと

出生前診断では、次のようなことは判断できない、または判断が難しい場合があります。
- 自閉スペクトラム症などの発達特性
- 知的障害の有無や程度
- 出生後に症状が出る病気
- すべての遺伝性疾患
- すべての形態異常
- 病気がある場合の症状の重さ など
特にNIPTは、赤ちゃんそのものを直接調べる検査ではなく、胎盤由来のDNA断片を含む母体血中のcfDNAを調べるスクリーニング検査です。
そのため、胎盤と胎児の染色体が一致しない「限局性胎盤モザイク」などにより、検査結果が食い違うことがあります。
主な原因としては、限局性胎盤モザイク、バニシングツイン、母体由来のコピー数変化、母体の腫瘍などが報告されています。
このような理由から、NIPTで陽性となっても、それだけで診断は確定しません。必要に応じて羊水検査や絨毛検査などの確定的検査を検討します。
出生前診断の種類
出生前診断は、目的によって大きく3つに分けると理解しやすくなります。
| 分類 | 主な検査 | 役割 |
|---|---|---|
| 非確定的検査 | NIPT、コンバインド検査、クアトロ検査、超音波マーカー検査 | 染色体疾患などの可能性・リスクを評価する |
| 画像検査 | 初期精密超音波検査、中期精密超音波検査 | 赤ちゃんのからだの形や臓器を観察する |
| 確定的検査 | 羊水検査、絨毛検査 | 染色体疾患の診断を確定する |
非確定的検査は、体への負担が比較的少ない一方で、診断結果を確定するものではありません。
確定的検査は、染色体について診断を確定できますが、羊水や胎盤の組織を採取するため、流産などのリスクがわずかにあります。
主な出生前診断の比較
こちらの表では、主な出生前診断を簡単に比較しています。
| 検査 | 分類 | 時期の目安 | 検査方法 | 主にわかること | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| NIPT(新型出生前診断) | 非確定的検査 | 妊娠10週以降 | 採血 | 21・18・13トリソミーの可能性 | 陽性でも確定ではない。認証施設では対象疾患を3疾患に限定 |
| 初期精密超音波検査 | 画像検査 | 妊娠11〜13週ごろ | 超音波 | NT、心拍、頭蓋、四肢、初期に確認できる形態的所見 | 染色体診断を確定する検査ではない |
| コンバインド検査 | 非確定的検査 | 妊娠11〜13週ごろ | 超音波+採血 | 21・18・13トリソミーなどの確率 | わかるのは「確率」のため、結果の解釈が重要 |
| クアトロ検査 | 非確定的検査 | 妊娠15〜18週ごろ | 採血 | 染色体疾患などの確率 | NIPTより陽性的中率が低くなることがある |
| 絨毛検査 | 確定的検査 | 妊娠11〜14週ごろ | 胎盤の絨毛を採取 | 染色体の診断 | 流産などのリスクがわずかにある |
| 羊水検査 | 確定的検査 | 妊娠15〜16週以降が目安 | 羊水を採取 | 染色体の診断 | 流産などのリスクがわずかにある |
| 中期精密超音波検査 | 画像検査 | 妊娠18〜24週ごろ | 超音波 | 脳・心臓・臓器・手足などの詳しい形態評価 | 妊娠初期には見えにくい所見を確認できる |
詳しい実施条件等は医療機関によって異なります。検査を検討する際は、必ず受診先で確認をしましょう。
どの検査を選べばいい?|当院の考え方

検査が多く、「どれを選べばいいのか分からない」とお悩みになる方も多くいらっしゃいます。
当院では、まず超音波検査で赤ちゃんの状態を確認してから、その方にとって本当に適した検査を一緒に考えることを大切にしています。
実際に当院では、NIPTをご希望で来院された方のうち、検査前の超音波所見によりNIPT以外の方針がより適切と判断された方が5.9%いらっしゃいました(この内容は日本産婦人科超音波学会で発表しています)。
採血だけで決めるのではなく、超音波を含めて評価することに大きな意味があると考えています。
遺伝カウンセリングは院長・宋美玄が担当し、検査の意義や限界、結果が出たあとの流れまで、ていねいにご説明します。受けるかどうか迷っている段階でも構いません。
出生前診断はいつまでに受ける?
前述のように、出生前診断の時期は検査ごとに異なります。
おおまかには、次のように考えると整理しやすくなります。
| 妊娠週数 | 検討される検査 |
|---|---|
| 10週以降 | NIPT |
| 11〜13週ごろ | 初期精密超音波検査、コンバインド検査、絨毛検査 |
| 15〜18週ごろ | クアトロ検査、羊水検査 |
| 18〜24週ごろ | 中期精密超音波検査 |
しかし大切なのは、検査そのものの期限だけではありません。
検査後に、結果説明、追加の超音波検査、羊水検査などの確定的検査、パートナーや家族との相談を行う時間が必要です。
そのため、出生前診断を検討している場合は、妊娠10週を過ぎてから慌てて探すよりも、妊娠初期の早い段階で「どの検査が自分に合うか」を相談しておくことをおすすめします。
出生前診断の費用
出生前診断の多くは自費診療です。
費用は検査内容、医療機関、カウンセリングや超音波検査が含まれるかどうか、陽性時のフォロー体制などによって大きく変わります。
| 検査 | 費用の目安 |
|---|---|
| NIPT | 10万円弱〜20万円程度 |
| 初期・中期精密超音波検査 | 数万円程度 |
| コンバインド検査 | 数万円程度 |
| クアトロ検査 | 数万円程度 |
| 羊水検査・絨毛検査 | 10万円台になることがある |
出生前検査認証制度等運営委員会のNIPT解説でも、NIPTの費用は10万円弱〜20万円と説明されています。
出生前診断の費用比較のポイント
費用を比較するときは、金額だけを見るのではなく、次の点を確認してください。
- 検査前の遺伝カウンセリングが含まれているか
- 採血前に超音波検査を行うか
- 結果説明を医師が行うか
- 陽性時に確定検査へつながる体制があるか
- 検査分析機関が認証されているか
- 判定保留の場合の対応が明確か
- パートナーや家族への説明機会があるか
安い検査が必ずしも悪いわけではありません。
ただし、NIPTは「採血して結果を返す」だけでは不十分な検査です。
陽性、判定保留、想定外の所見が出たときに、どこまで支援されるかを含めて考える必要があります。
検査を検討する場合は「認証施設かどうか」を確認

出生前診断、特にNIPTを検討するうえで「その施設が認証施設かどうか」はとても重要です。
認証施設とは、出生前検査認証制度等運営委員会が、NIPTを実施する医療機関・検査分析機関として一定の基準を満たしていると認証した施設です。
こども家庭庁系の情報サイトでは、認証施設は単にNIPTを実施するだけではなく、正しい情報提供、検査前後の遺伝カウンセリング、不安や悩みに寄り添う支援の仕組みを整えている施設として説明されています。
認証施設では、特に以下の点に留意しています。
- 検査前に十分な説明と遺伝カウンセリングを行う
- 受ける・受けないのどちらにも誘導しない
- NIPTの対象疾患と限界を説明する
- 陽性的中率や偽陽性・偽陰性を説明する
- 陽性や判定保留の場合に確定的検査へつなげる
- 小児医療や福祉の情報にもつなげる
- 認証された検査分析機関に委託する
- 実施状況を年次報告として提出する
非認証施設での検査について
また認証施設では、NIPTの対象は、13トリソミー、18トリソミー、21トリソミー(ダウン症候群)の3疾患に限定されています。
これは「ほかの検査ができないから」ではなく、検査精度や医学的意義、倫理的・社会的影響をふまえた制度上の判断です。
一方で、制度の枠組みの外では、3疾患以外の疾患を対象にしたNIPTが、十分な遺伝カウンセリングや支援体制がない中で行われているという調査結果が報告されています。
こども家庭庁の専門委員会資料でも、3疾患以外については分析的妥当性や臨床的妥当性が十分に確立されていないこと、臨床応用には慎重な対応が必要であることが示されています。
当院の出生前診断のこだわり

丸の内の森レディースクリニックは、日本医学会認定のNIPT認証施設です。
当院では、NIPTを希望される方に対して、採血だけを行うのではなく、検査前の説明、遺伝カウンセリング、超音波検査を大切にしています。
理由はシンプルです。
NIPTは、血液検査としては高精度です。しかし、赤ちゃんの状態を直接見る検査ではないためです。
例えば、妊娠週数が想定と違う、赤ちゃんの大きさが十分でない、心拍が確認できない、大きな形態的所見がある、強い浮腫がある、といった場合には、NIPTを行うことが最適とは限りません。
NIPT、精密超音波検査、羊水検査、絨毛検査、その他の検査、あるいは経過観察のどれが適しているのかを慎重に考える必要があります。
なお、当院のNIPTでは、院長・宋美玄が遺伝カウンセリングとプレエコーを担当し、陽性時には確定検査へつながる体制も整えています。
詳しい検査内容、費用、予約方法は詳細ページをご確認ください。
▷詳しくはこちら「NIPT(新型出生前診断)」
出生前診断を受けるべきか迷ったら

出生前診断を受けるべきかどうかは、医学的な条件だけでは決まりません。
迷ったときは、次の項目について考えてみることをおすすめします。
- 自分は何を知りたいのか
- 染色体疾患が心配なのか、形態異常が心配なのか
- 陰性だった場合にどのくらい安心できるか
- 陽性だった場合に確定検査を受けたいか
- 検査結果をパートナーや家族と共有できるか
- 検査を受けない場合、どのような不安が残りそうか
- 出生後の医療や支援についても知りたいか
迷っている段階こそ、「自分は何を不安に思っているのか」「どこまで知りたいのか」を整理することが大切です。
当院で相談できる出生前検査
丸の内の森レディースクリニックでは、NIPTだけでなく、出生前検査全体についてご相談いただけます。
NIPTを検討している方は、こちらをご覧ください。
→ NIPT(新型出生前診断)
NIPT以外の出生前検査、初期精密超音波検査、FMFコンバインドプラス、中期精密超音波検査、遺伝カウンセリングについては、こちらで詳しくご案内しています。
→ 出生前検査(NIPT以外)/遺伝カウンセリング
他院で妊婦健診中の方、紹介状がない方、検査を受けるか迷っている方もご相談いただけます。
当院の診療案内NIPT(新型出生前診断)|NIPT(新型出生前診断)とはよくある質問

東京・丸の内での出生前診断は「丸の内の森レディースクリニック」へ

出生前診断とは、おなかの赤ちゃんについて、生まれる前にわかる範囲の情報を調べる検査の総称です。
「新型出生前診断」とされるNIPTは高精度な検査ですが、確定診断ではありません。陽性的中率は疾患や年齢によって変わり、陽性時には確定的検査や専門的なカウンセリングが必要になります。また、NIPTではわからない形態異常や出生後にわかる病気もあるため、超音波検査との役割分担も重要です。
そして出生前診断で大切なのは、検査項目の多さや価格だけで選ばないことです。
検査前に十分な説明を受け、結果後の支援体制まで確認したうえで、ご自身に合った選択をしていきましょう。
丸の内の森レディースクリニックは、日本医学会認定のNIPT認証施設として、採血だけで終わらない出生前検査を大切にしています。検査を受けるか迷っている段階でもご相談ください。
▷詳しくはこちら「NIPT(新型出生前診断)」
参考文献
- 出生前検査とは?
- NIPTを実施する認証施設
- NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)とは
- 医療機関・検査分析機関の皆さまへ | 出生前検査認証制度等運営委員会
- 出生前検査認証制度等運営委員会 令和 6 年度(2024 年度)実施状況報告
- NIPT 等の出生前検査に関する情報提供及び 施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針
- Copy-Number Variation and False Positive Prenatal Aneuploidy Screening Results | New England Journal of Medicine
- Placental, maternal, fetal, and technical origins of false-positive cell-free DNA screening results - ScienceDirect
- お腹の赤ちゃんの検査の種類 | 出生前検査認証制度等運営委員会
- NIPT導入の前後10年間における各出生前遺伝学的検査を解析 ~羊水検査、絨毛検査は減少し、高リスク症例に実施の可能性~ | 国立成育医療研究センター
- 令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況|厚生労働省







